父が亡くなり、相続人である私(長男)と母と弟(次男)は、父の相続財産(自宅の土地建物のみ)を母が単独相続する旨の遺産分割協議をしました。これは、どうせ母が死亡したときには私と弟で当該相続財産を相続することになるから今の時点で法定相続分通りに取得してその旨の共有の登記をするのも手間だな、と考えたからでした。
すると、当該相続財産について母の単独名義の登記が完了した後に、父の遺品整理をしていると、父の机の引き出しの中から父の直筆の遺言書が見つかりました。そこには、自宅不動産について、長男である私に相続させる旨の記載がありました。
一度行った遺産分割協議は、当然に無効になって、私が単独で相続する、ということになりますよね?
 

当然に無効、ということではないですが、あなたが希望をするのでれば、一度行った遺産分割協議を要素の錯誤により無効(民法95条)とし、あなたの単独名義の登記をすることが可能です。
 

解説

まず、遺言書が存在するとしても、それと違う内容の遺産分割協議を相続人間で行うこと自体は可能です。ですので、相談のケースにおいても、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を行うことは可能で、遺言書の発見により当然に無効になるものではありません。遺言書の存在を知った上で、それでも、あなたが、「自分は既にマンションを購入していて自宅で生活する必要はないし、母の老後のためにも自宅不動産は母に相続させてそこで母には生活を続けて欲しい」と考えるのであれば、そのまま遺産分割協議を維持することは可能です。
もっとも、遺産分割協議を有効のままとし、その後母が亡くなった場合、遺言書を残していなければ、当該自宅不動産はあなたと弟の二人で共有することになり、あなたにとって不利な結果となります。それを避け、やはり遺言書の通りに自宅不動産はあなたが相続し、その上で母に使用させ(使用貸借契約を締結する)、母の死亡後には売却する、ということを望むのであれば、当然遺産分割協議の無効を主張することができます。
その際の法律構成は、要素に錯誤があった(民法95条)ために無効とする、というものです。要するに、自宅不動産の全部を自分に相続させるという内容の遺言書の存在を知っていたのであれば、自分の相続権を放棄して母にそのすべてを相続させるという意思表示をするはずはなかった、ということを主張して、遺産分割協議の無効を主張することができるのです。