Q:

 父が亡くなった後、兄が父の自筆証書遺言(兄に有利な内容)を出してきました。手書きしてあり、押印などもあり、遺言書の形式は守っているようですが、遺言の日付を見ると父は明らかに認知症を患っていた時期だと思います。これは有効なのでしょうか。
 

A:

 自筆証書遺言が形式的な要件を満たしていても必ず有効になる訳ではありません。遺言を残すためには、遺言能力(民法963条)が必要となります。つまり、自分の行為の結果や意味を理解できる精神能力のある人でないと遺言は残せません。
 そのため、遺言の意味もよく分からないまま、お兄さんの指示したとおり、文字を書いただけですと、遺言の効力は無いことになります。もちろん、お兄さんが代筆した場合も無効になります。
 ただし、遺言の有効性を争って裁判などになれば、遺言が無効であると証明しなければなりません。本問の事案であれば、病院のカルテなどを取り寄せることにより、遺言がなされた時期のお父さんの認知症の状態を証明することになどによって、遺言の有効性を覆せる可能性があるかも知れません。極端にお兄さんに有利な内容になっているのに、お兄さんはそれに見合うだけのお父さんへの貢献がなかったといった事情も考慮要素になるでしょう。