【判例解説】信託設定が遺留分制度を潜脱する意図でなされたものであり公序良俗に反して無効と判断された事例

近時、相続や事業承継の選択肢の一つとして注目されている民事信託ですが、平成30年9月12日、東京地裁にて興味深い判決が下されました。

今回のコラムではこの判例について解説いたします。
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この事案では、被相続人Zの相続人が3名(長男X、次女A、次男Y)いました。そして、Zを委託者、Yを受託者として以下の内容で、信託契約が締結されました。

信託財産:Z所有不動産および300万円

信託事務:受託者は、信託金銭を用い、信託不動産に関する公租公課・修繕費その他信託不動産の維持管理に必要な一切の費用の支払のために使い、信託金銭を、受益者の身上監護のために使うことができる。

受益者:当初受益者をZとし、Z死亡後の受益者につき、第1順位としてXに受益割合の6分の1、Aに受益権割合の6分の1、Yに受益権割合6分の4、第2順位としてYの子どもらが均等に取得する。


上記の受益権割合の定め方からすると、一見すれば、Xは遺留分どおりの受益権を取得できるように見え、遺留分侵害の問題は生じないように見えます。

しかし、本件では、Zが所有していた不動産のうち、Zが居住していた土地建物については、売却が予定されていない一方で、駐車場による賃貸収入も不動産価値に見合うものでありませんでした。また、その他のいくつかの土地については、ほぼ無価値であり、売却することも賃貸して収益を上げることも現実的に不可能なものが含まれていました。

そのため、これらの不動産については経済的利益の分配というものが想定できず、Xが得ることができる経済的利益は、実質的にXの遺留分を下回るものになっていました。そして、そのことはZとYが信託契約を締結した時点でわかっていたという判断がされました。

このことなどから、本件信託契約のうち、経済的利益の分配が想定できない不動産を目的財産とした部分については、「遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したものであって、公序良俗に反して無効」という判断がなされました(無効となったのは、あくまで一部の不動産に関してのみで、信託契約全てが無効という判断をされたわけではありません。)。


信託契約ではある程度柔軟な形での遺産相続の実現を図ることはできますが、本件のように、それが実質的に相続人の一部の遺留分を侵害することになる場合には、無効と判断されてしまうおそれがあります。信託契約を締結するときは、是非この点にも注意を払っていただければと思います。 

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